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第84話 静まり返った屋敷

last update Last Updated: 2025-07-10 17:44:59

 眩しい朝日が顔に当たり、突然私は目が覚めた。

「えっ!?」

気付けば私は自分の部屋のベッドに横たわっていた。

「ど、どうしてここに……?」

天井を見つめながらポツリと呟く。

確か……夜ベッドに入り、気づけば何故か森の中で目が覚めた。そしてそこには……。

両肩を抱きかかえ、ブルリと震えた。

「ジョンがいたわ……。しかも私の命を狙っていた……まさか、ジョンが犯人だったなんて……」

その事実は私にとって相当ショックだった。

「私を恨んでいるのはノリーンだと思ったけど……ジョンはノリーンが差し向けた刺客だったのかしら……?」

そう言えばノリーンにはジョンの変身魔法が通じなかった、それに私でさえ忘れていたのにジョンの記憶が彼女には残っていた……。

「だけど、私の目からは……2人は知り合い同士には見えなかったわ……」

でも、それは演技だったのだろうか? そのことをジョンに伝えれば、きっと彼のことだ。

<やはりユリアは馬鹿だな>

そう言われてしまう気がする。

「今何時かしら?」

グルリと視線を動かし、部屋の壁掛け時計を見て目を見張った。何と時刻は午前8時を過ぎていたのだ。

「た、大変! 遅刻するわ!」

私は大急ぎでベッドから飛び降りた――

****

「どうして誰も起こしに来てくれないのかしら? しかも妙に屋敷の中は静まり返っているし……」

朝の支度を鏡の前でしながらブツブツ文句を言う。

時計を見るとすでに8時半だった。

「急がなくちゃ!」

部屋を飛び出し、廊下に出たところで私は異変に気がついた。

「な、何……?」

屋敷の中は気味悪いくらい静まり返っている。まるで人の気配を感じない。それどころかうっすら霧のようなものに覆われている。

「え……? ど、どうして……?」

カバンを抱え、震えながら出口を目指して歩いてると霧にまぎれて誰か人が立っている。

え……? ま、まさか……。

すると前方から声が聞こえてきた。

「何だ、ユリア。そんな所にいたのか? 随分探したぞ」

そして人影はこちらへ向かって歩いてくる。

「ジョ、ジョン……」

私の身体から汗が滲んでくる。

「よく眠れたか? こっちは一晩中お前を探し続けて少々疲れているんだ。だから……さっさとここで死んでくれるか?」

「ほ、本気で言ってるの……? ね、ねぇ……こんなことやめましょ? は、話し合いを……しましょうよ」

震えながらジョン
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